Today There Are No Gentlemen — 本をまだ読んでいないなら、まずはTシャツを。
チャリング・クロス・ロードで見つけた、2.50ポンドの宝物
私が『Today There Are No Gentlemen』を初めて知ったのは、1999年。きっかけは、パオロ・ヒューイットの『The Sharper Word』だった。モッズのスタイルを編んだその本に、ニック・コーンの文章が収められていた。
ディック・ヘブディジも、素晴らしい一冊『The Look』の著者ポール・ゴーマンも、コーンの仕事に触れている。パオロ、ディック、ポール。この顔ぶれが認める書き手なら、読まずにはいられない。まさに、書き手たちが敬愛する書き手だ。
それで私は、昔の英国の広告に登場するJ・R・ハートリーよろしく、イエローページをめくって本を探した。見つけたのはソーホーのすぐ近く、チャリング・クロス・ロード。図書館の蔵書だった古本で、お値段はなんと2.50ポンド。それ以来、ずっと大切にしている。
ストリートのすぐそばで書く
ロンドン生まれのニック・コーンによる『Today There Are No Gentlemen』は、戦後の英国で男性の装いがどう変わったのかを、ヒッピーの時代までたどる一冊だ。タイトルは、ある靴職人がこぼした嘆きに由来するという。
1960年代、コーンは『The Observer』で音楽について書き、『Queen』誌では「Pop Scene」を担当した。ミュージシャンと同じ場所に立ち、同じ夜を過ごす。彼の文章には、外から眺めるだけではつかめない熱と距離感がある。

ジョナサン・エイトケンの『The Young Meteors』にも登場するコーンは、スウィンギング・ロンドンの文化を記録するだけでなく、その輪の中にいた。デヴィッド・ホックニーやビートルズといった顔ぶれと並んで紹介されること自体が、当時の彼の存在感を物語っている。
ザ・フーのピート・タウンゼントとの交流、ソーホーでのピンボール、そして『Arfur』。コーンの周りでは、音楽と物語と街の暮らしが、いつも地続きになっていた。
『サタデー・ナイト・フィーバー』の奥にいるモッズ
1976年、コーンは『New York』誌に「Tribal Rites of the New Saturday Night」を発表した。ブルックリンのディスコと、そこに集う若者たちを描いたこの記事が、映画『サタデー・ナイト・フィーバー』の出発点になる。

ところが後年、コーンは、その物語の多くが創作だったと明かす。主人公の着想源には、1960年代のシェパーズ・ブッシュで彼が知っていたモッズがいた。ゴールドホーク・ロードの空気、仲間内での存在感、誰よりも格好よくありたいという気持ち。それが、ニューヨークのダンスフロアへと姿を変えたのだ。

このつながりを、日本のモッズも見抜いていた。コーンが後に語ったエピソードによれば、日本のモッズを取材した映像作家が、なぜ優れたモッズ映画がないのかと尋ねたところ、『サタデー・ナイト・フィーバー』がある、と返されたという。
フレアとモヘアのスーツ。ディスコとモッズ。見た目は違っても、その奥にある衝動は通じている。この話が好きなのは、服や音楽の分類だけでは測れない、スタイルの本質を感じるからだ。
服をつくるのは誰か。スタイルを生むのは誰か。
日本では2020年、奥田祐士訳『誰がメンズファッションをつくったのか? 英国男性服飾史』として、DU BOOKSから本書が刊行された。英語のタイトルや表紙に見覚えがなくても、この邦題なら思い当たる人がいるかもしれない。

コーンの文章は、ストリートの言葉で書かれている。写真家が構えずに一瞬を切り取るように、彼もまた、現場のすぐそばから人々の姿を捉えていた。
モッズ、スキンヘッズ、スエードヘッズ、ロッカーズ、テディ・ボーイズ、ヒッピー。今では服飾史の中で語られる彼らも、当時は周囲から煙たがられ、時には恐れられる若者たちだった。コーンは、その内側にある誇りやこだわりを見逃さなかった。

この本で私が惹かれるのは、労働者階級の若者たちこそが新しいファッションを生み出している、という視点だ。そして、男が服を選ぶことは、自分が何者なのかを表す行為でもある、ということ。
業界のための専門書としてでも、遠くから若者を分類する研究書としてでもなく、装うことを生きている人間の話として読める。だから、今もページを開きたくなるのだと思う。

本をまだ読んでいないなら、まずはTシャツを。
2026年には、コーンの文章を集めた『Corner Boy: Loiterings New and Old』も刊行予定だ。出版社の案内では、米国発売は10月6日、英国発売は11月19日。彼の仕事にあらためて触れる機会がやってくる。
いつか、この大切な一冊への敬意を服にしたいと思っていた。今シーズンは、その気持ちを形にするのにぴったりだった。
BEPPOは、『Today There Are No Gentlemen』の象徴的なブックカバーから着想を得たプリントTシャツ。程よい厚みのコットン100%に、Anglozineを象徴するモックネック。縫製からプリントまで、ロンドンのベスナル・グリーンで手がけている。
表紙のブラウンを忠実に再現したチェスナットブラウンと、イエローとバーガンディのプリントが映えるアイボリー。二つの色で、この本へのオマージュを届けたい。
温かい励ましの言葉をくれたニック・コーンとベン・ラトリフに、心から感謝を。
さて、本をまだ読んでいないなら、まずはTシャツを。
関連資料:TOKION:ニック・コーンとデーヴィッド・マークスの対談/日本語版の書誌情報/ZE Books:Corner Boy
